ごあいさつ

川崎病冠動脈病変の新しい基準値づくりに御協力ください!

皆様の多大な御協力により、Z Score Projectが終了し、日本人小児冠動脈内径の標準値が作成されました。心より御礼申し上げます。

この冠動脈内径のZスコアを臨床で用いるためには、予後に関するカットオフ値が必要です。たとえば、巨大瘤の内径は、乳児でも年長児でも体格にかかわらず8mm超でいいのか、後者では周辺の正常冠動脈の4倍超が妥当なのか、裏付けとなるデータは不十分といわざるを得ません。アメリカ心臓病学会(AHA)のガイドライン(2004年)で、中等瘤を3~7とした根拠も不明です。なお、2017年のガイドラインの改訂版では、中等瘤をZスコア5以上10未満かつ実測値8 mm未満、巨大瘤をZスコア10以上または実測値8mm以上という新しい基準が提唱されました。

そこで、このリサーチ・クエスチョンを解決するべく、日本川崎病学会の認定も受け、Z Score Project研究の第2のステージ(ZSP2)を立ち上げました(UMIN000010606)。
過去20年間に心臓カテーテル検査(もしくは造影CTかMRI)で冠動脈を評価した川崎病患者を対象とした、後方視的多施設共同研究です.急性期の心エコーの冠動脈最大内径のZスコアと血栓形成・狭窄・閉塞との関連を調べ、適切なZスコアのカットオフ値を求めることが主要エンドポイントです。
副次エンドポイントとして、退縮、狭心症・心筋梗塞・心臓関連死の発生についてもカットオフ値を求めます。また、冠動脈最大内径の拡大倍率についても同様の解析を行います。(上記の事情を踏まえ、AHAのZスコアによる新基準の妥当性を検討する方針としました。)

1例からでも結構ですので、ぜひ御参加ください。できるだけ多くの症例(目標1,000例)を集積して精度を高めたいと存じます。
われわれ日本人の手で、力を合わせて、新しい川崎病冠動脈病変の基準値を世界に発信しませんか?

2015年12月、参加44施設、登録患者数1,033例をもって本研究は終了としました。1,006例を対象に解析した論文は、2018年1月5日にJAMA Pediatrics(インパクトファクター10.3)にアクセプトされました。
ご協力誠にありがとうございました。
日本川崎病学会「内径のZスコアによる川崎病冠動脈瘤の重症度の評価」小委員会 研究代表者
東京都立小児総合医療センター循環器科・臨床試験科 部長
三浦 大
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厚生労働科学研究費補助金 臨床研究・予防・治療技術開発研究事業(H20-臨床研究-一般-008)
「重症川崎病患者に対する免疫グロブリン・ステロイド初期併用投与の効果を検討する前方視的無作為化比較試験」班
厚生労働省科学研究費補助金 難治疾患克服研究事業(H21-難治-一般-039)
「難治性川崎病の治療ガイドライン作成研究」班