冠動脈超音波検査

研究の背景

川崎病冠動脈障害を客観的に判断するために、年齢や体格ごとの小児の冠動脈内径の標準値、特にZスコアでの評価の要請が高まる中、欧米ではZスコアによる冠動脈拡大の評価が普及しつつあります。しかし、欧米で使用されているZスコア(AHA statement)は、冠動脈の超音波検査計測方法の統一がなされておらず、回帰分析によりZスコアを算出しているといった統計学的な誤りが存在します。また、McCrindleらが報告した標準曲線は、超音波診断装置の計測精度の信頼性が劣り、かつ対象人数が221人と少ないため、回帰分析にてZスコア曲線を描いている点に統計学的誤りがあります。
日本での標準値曲線では、本研究事務局、布施らの標準曲線があります。標準曲線を作成する統計学的手法は正しいが、対象人数が544人と少なく、冠動脈内径の計測手技も統一がなされていないため、十分な信頼性が担保されていません。

以上のように、国内外において信頼性の高い小児の冠動脈内径の標準値曲線は未だ作成されていません。冠動脈の内径の標準値は川崎病の診療・研究において、最も基礎的で重要な事項であり、そのため早急に正確な正常小児における冠動脈内径標準値曲線を作成する必要があります。

目的と意義

冠動脈超音波検査に纏わる「Z Score Project」の目的は、国際標準となる小児の冠動脈内径の標準曲線をLMS法により作成し、体表面積ごとにZスコアを計算可能にすることです。このことにより、以下のような意義が導かれると期待するものです。

1)小児の体格に合わせた冠動脈内径の標準値を作成することで、冠動脈が拡大、狭窄する疾患である川崎病の診断、治療、研究の基礎的資料となる。
2)川崎病の診断、治療、研究の発展に不可欠な資料となる。
3)多施設における冠動脈超音波検査の標準化が図れ、精度の高い多施設共同研究が実施可能となる。

Z Score Projectでは、電子カルテや心臓超音波検査機器に搭載可能なZ Score近似多項式を作成しました。
複雑な設定をする事なく比較的簡便に2点間計測から男女別・冠動脈枝別のZ scoreを計算することが可能です。
計算式の使用をご希望なさる方は下記までご連絡ください。
小林 徹
国立成育医療研究センター 臨床研究センター
企画運営部
〒157-8535東京都世田谷区大蔵2-10-1
TEL:03-3416-0181
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厚生労働科学研究費補助金 臨床研究・予防・治療技術開発研究事業(H20-臨床研究-一般-008)
「重症川崎病患者に対する免疫グロブリン・ステロイド初期併用投与の効果を検討する前方視的無作為化比較試験」班
厚生労働省科学研究費補助金 難治疾患克服研究事業(H21-難治-一般-039)
「難治性川崎病の治療ガイドライン作成研究」班