冠動脈超音波検査

研究の背景

川崎病は乳幼児に好発する原因不明の血管炎症候群で、特に冠動脈の炎症が拡大・瘤などの冠動脈病変(CAL)を惹起し、巨大瘤から破裂や心筋梗による突然死をきたすこともある。発生数は増加し続け、第21回全国調査によれば2年間発生数は12,000人、0〜4歳の罹患率は人口10万人対200人を突破した1)自治医科大学公衆衛生学教室.第21回川崎病全国調査成績.。日本を始め先進国では、川崎病は小児の後天性心疾患の最大の原因で、成人期の虚血性心疾患との関連も示唆されることから世界的な問題となっている。

川崎病のCALは無治療では20〜30%に生じるが、免疫グロブリン療法とアスピリンを適切な時期に開始すれば、5%未満に抑制できる2)〜4)2) 小川俊一,赤木禎治,石井正浩,他.2007年度合同研究班報告.川崎病心臓後遺症の診断と治療に関するガイドライン(2008年改訂版).
3) Newburger JW, Takahashi M, Gerber MA, et al. Diagnosis, treatment, and long-term management of Kawasaki disease: A Statement for Health Professionals From the Committee on Rheumatic Fever, Endocarditis and Kawasaki Disease, Council on Cardiovascular Disease in the Young, American Heart Association. Circulation. 2004;110:2747-2071.
4) 佐地勉, 薗部友良, 上村茂, 他, 日本小児循環器学会学術委員会. 川崎病急性期治療のガイドライン. 日児会誌 2003;107:1713-1715.
。一方、免疫グロブリン療法を行っても発熱などの症状が改善しない不応例が15〜20%存在し、CALの主な原因になっている2)〜4)2) 小川俊一,赤木禎治,石井正浩,他.2007年度合同研究班報告.川崎病心臓後遺症の診断と治療に関するガイドライン(2008年改訂版).
3) Newburger JW, Takahashi M, Gerber MA, et al. Diagnosis, treatment, and long-term management of Kawasaki disease: A Statement for Health Professionals From the Committee on Rheumatic Fever, Endocarditis and Kawasaki Disease, Council on Cardiovascular Disease in the Young, American Heart Association. Circulation. 2004;110:2747-2071.
4) 佐地勉, 薗部友良, 上村茂, 他, 日本小児循環器学会学術委員会. 川崎病急性期治療のガイドライン. 日児会誌 2003;107:1713-1715.
。免疫グロブリン療法不応例には、ステロイド5)Kobayashi T, Saji T, Miura M, et al. Randomized Trial of Immunoglobulin plus Prednisolone for Severe Kawasaki Disease. Lancet. 2012 ;379:1613-20.,6)Miura M, Tamame T, Naganuma T, et al. Steroid pulse therapy for Kawasaki disease unresponsive to additional immunoglobulin therapy. Paediatrics & Child Health. 2011;16:479-484.、シクロスポリン7)Suzuki H, Terai M, Hamada H, et al. Cyclosporin A treatment for Kawasaki disease refractory to initial and additional intravenous immunoglobulin. Pediatr Infect Dis J. 2011;30:871-876.、インフリキシマブ8)Son MB, Gauvreau K, Burns JC, et al. Infliximab for intravenous immunoglobulin resistance in Kawasaki disease: a retrospective study. J Pediatr. 2011;158:644-649.e1.など種々の治療法が試みられる。われわれが関与したRAISE試験では5)Kobayashi T, Saji T, Miura M, et al. Randomized Trial of Immunoglobulin plus Prednisolone for Severe Kawasaki Disease. Lancet. 2012 ;379:1613-20.、免疫グロブリン療法不応予測例に対するランダム化比較試験によって、プレドニゾロン併用療法のCAL抑制効果が示された。しかし、これらの治療法を行ってもCALは完全には抑制できない。

川崎病に合併したCALは、著変なく経過することもあるが、狭窄性病変から虚血性心疾患を合併したり、正常化(退縮)したりすることもある。Kato et al.の長期の観察によれば9)Kato H, Sugimura T, Akagi T, et al. Long-term consequences of Kawasaki disease:. a 10- to 21-year follow-up study of 594 patients. Circulation. 1996;94:1379-1385.、心臓カテーテル検査による冠動脈造影(CAG)で冠動脈瘤と診断した例の19.2%に狭窄性病変、47.9%に退縮を生じた。このようなCALの予後には、瘤の形態や発症年齢なども関与するが、瘤の大きさが最も影響を与えると報告されている10)一ノ瀬英世,赤木禎治,井上治,他.川崎病の末梢動脈瘤の検討.日本小児会誌.1986;90:2757-2761.。実際、日常診療では、冠動脈径の実測値に基づき、拡大(小動脈瘤)、中等瘤、巨大瘤(日本2)では内径4mmと8mm、米国3)では3mmと6mmで区分)に区分し管理されている。また、 mm超では残存病変があり、6mm超では狭窄のリスクがあることから11)Iemura M, Ishii M, Sugimura T, et al. Long term consequences of regressed coronary aneurysms after Kawasaki disease: vascular wall morphology and function. Heart. 2000;83:307-311.,12)Tsuda E, Kamiya T, Kimura K, et al. Coronary artery dilatation exceeding 4.0 mm during acute Kawasaki disease predicts a high probability of subsequent late intima-medial thickening. Pediatr Cardiol. 2002; 23: 9-14.、前者では狭窄に注意し、後者は巨大瘤に準じた観察が推奨されている2)小川俊一,赤木禎治,石井正浩,他.2007年度合同研究班報告.川崎病心臓後遺症の診断と治療に関するガイドライン(2008年改訂版).

一方、小児では成長の要素があるので、冠動脈径は実測値でなく体表面積で補正したZスコアで評価する方が妥当である可能性がある。実際、米国ではZスコアによるCALの判定法が一般的となり、中等瘤の定義としてZスコア3〜7の間も併記されている3)Newburger JW, Takahashi M, Gerber MA, et al. Diagnosis, treatment, and long-term management of Kawasaki disease: A Statement for Health Professionals From the Committee on Rheumatic Fever, Endocarditis and Kawasaki Disease, Council on Cardiovascular Disease in the Young, American Heart Association. Circulation. 2004;110:2747-2071.。また、従来から年長児に用いられている周辺冠動脈径との比較2)小川俊一,赤木禎治,石井正浩,他.2007年度合同研究班報告.川崎病心臓後遺症の診断と治療に関するガイドライン(2008年改訂版).(小動脈瘤1.5倍未満、中等瘤1.5倍以上4倍以下、巨大瘤4倍超)は、体格による補正の一種と言える。しかし、このような区分とCALの予後との関連性は明らかでなく、米国のZスコア算出法3)Newburger JW, Takahashi M, Gerber MA, et al. Diagnosis, treatment, and long-term management of Kawasaki disease: A Statement for Health Professionals From the Committee on Rheumatic Fever, Endocarditis and Kawasaki Disease, Council on Cardiovascular Disease in the Young, American Heart Association. Circulation. 2004;110:2747-2071.には心エコーの計測法やデータの統計処理など問題点がある。

現在、われわれは、統一した心エコー計測法を用い13)Fuse S, Kobayashi T, Arakaki Y, et al. Standard method for ultrasound imaging of coronary artery in children. Pediatr Int. 2010;52:876-82.、多施設共同研究によって日本人小児の冠動脈内径標準値を作成している(データ集積は終了した)。本標準値によって、年齢・体格を考慮した小児の冠動脈内径のZスコアを算出が可能となる。さらに、Zスコアを用いたCALの重症度の評価ができれば臨床的な有用性は高い。そこで、本研究の目的は、冠動脈瘤内径のZスコアとCALの予後、特に冠動脈の血栓形成・狭窄・閉塞との関係を後方視的に調べ、適切な管理基準を明らかにすることである。

目的

川崎病に罹患した小児の冠動脈瘤内径のZスコアと予後(血栓形成・狭窄・閉塞、狭心症・心筋梗塞、心臓関連死、退縮)との相関を調べ、適切な冠動脈瘤の管理法を明らかにすること。

意義

・年齢・体格に応じた川崎病冠動脈瘤の重症度を評価することが可能となり、通院間隔、治療薬、画像診断などの適切な診療に有用である。

・わが国が推進するべき冠動脈瘤の管理に関する前方視的研究の基礎的なデータとなる。



 日本川崎病学会 小児冠動脈内径標準値作成小委員会
研究代表者 三浦 大
東京都立小児総合医療センター循環器科・臨床試験科 部長
〒183-8561 東京都府中市武蔵台 2-8-29
TEL: 042-300-5111, FAX: 042-312-8162
E-mail:masaru_miura @tmhp.jp
研究事務局 福島 直哉
東京都立小児総合医療センター循環器科 医員
〒183-8561 東京都府中市武蔵台 2-8-29
TEL: 042-300-5111, FAX: 042-312-816
E-mail:naoya_fukushima@tmhp.jp
■研究分担者 加藤 太一 名古屋大学小児科 講師
賀藤  均 国立成育医療センター第一専門診療部 循環器科医長
金子 徹治 東京都立小児総合医療センター臨床試験科
小林  徹 国立成育医療研究センター 臨床研究企画室
佐地  勉 東邦大学医療センター大森病院 小児科 教授
須田 憲治 久留米大学医学部小児科 准教授
野村 裕一 鹿児島大学小児発達病態分野 准教授
濱岡 建城 京都府立医科大学大学院小児循環器・腎臓学 教授
廣野 恵一 富山大学医学部小児科 助教
深澤 隆治 日本医科大学小児科 准教授
布施 茂登 NTT東日本札幌病院小児科 医長
山岸 敬幸 慶應義塾大学医学部小児科 専任講師
脇  研自 倉敷中央病院小児科 部長
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厚生労働科学研究費補助金 臨床研究・予防・治療技術開発研究事業(H20-臨床研究-一般-008)
「重症川崎病患者に対する免疫グロブリン・ステロイド初期併用投与の効果を検討する前方視的無作為化比較試験」班
厚生労働省科学研究費補助金 難治疾患克服研究事業(H21-難治-一般-039)
「難治性川崎病の治療ガイドライン作成研究」班