ご挨拶

三谷義英

急性期治療の進歩により、川崎病の冠動脈瘤の合併率は減少しています。しかし、免疫グロブリン不応例や不全型などの問題のため、依然として冠動脈瘤は発生し、血栓形成・狭窄・閉塞(冠動脈イベント)から、狭心症・心筋梗塞・突然死といった急性冠症候群(心臓主要イベント)をきたすことがあります。
冠動脈瘤が大きいほど、これらの危険性が高いため、従来は内径の実測値に基づき管理されていました。一方、小児では成長の要素があるため、内径を体表面積で補正したZスコアでの方が妥当である可能性があります。米国心臓病学会の新しい基準では、Zスコアを用いて重症度が分類されています。
また、冠動脈イベントや心臓主要イベントの予防・治療に有効な薬剤はほとんど確立しておらず、その新規開発のためにも多数例を前向きに追跡する体制が必要です。実際、北米では2013年から、川崎病冠動脈瘤患者を登録(レジストリ)する研究が始まっています。そこで、日本人川崎病患者の冠動脈瘤の実態と予後を把握し、適切な管理方法を検討するため本研究を計画しました。
本研究では、中等度以上の冠動脈瘤の川崎病患者をレジストリし、10年間にわたり臨床情報を収集し(承認が得られればフォローアップ期間を延長します)、イベントの発生率と発生に影響する要因との統計解析を行います。
本研究により、日本の川崎病患者の冠動脈瘤に対する適切な管理法が明らかになることが期待されます。多くの先生方のご協力、研究へのご参加をお願いいたします。

日本川崎病学会会長 三谷 義英
(三重大学医学部附属病院 周産母子センター)

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